第19回

八月初旬、静岡県掛川市で三泊四日の初任者研修があった。
ためになる講義ももちろんあったが、
一番、面白く勉強になったのは、三日目の「テーマ活動」だった。
八~九人のグループに分かれ、午前十時から午後七時まで、
挑戦と奉仕の精神で、めったにできないことをする。というものだ。
僕たちのグループは、ヒッチハイクで静岡駅へ行き、
街頭でいろんな人に「理想の教師とはどんな人か?」を、
聞くことにした。ねらいは、初対面の人と相互理解すること。
全員一緒では動きにくいので、二、三人ずつに分かれた。
僕は女性二人と一緒に三人で行動することになった。
三人ともヒッチハイクは初めてだった。親指を立てるポーズをして、
最初に止まってくれたのは乗用車のおじいさん。事情を説明すると、
すまなそうに「農協までしか行かないんだよ」と言う。
「それで結構です」と乗せてもらったら、
10メートルほどで農協に着いてしまった。
僕は「まじかよー」と心の中でうめいた。
二台目は赤ちゃんを連れた若いお母さん。三台目は、
土砂を工事現場に運ぶトラックの明るいお兄さん。
初めて乗ったトラックは大きくて、座席の後ろに仮眠場所もあって、
僕はなんだかとてもうれしかった。
四台目は、電柱を専門に運ぶトラックのおじさん。
電柱の中は空っぽで竹輪みたいなんだと教えてくれた。
五台目の乗用車が静岡駅に着いたのは午後四時だった。
駅前で待ち合わせをしていた女子高生たちと一緒に、
地べたに座り話した。
彼女たちは理想の教師を「生徒の味方をしてくれる先生」と言った。
見知らぬ人に話し掛けて理解し合うには、
まず自分が何者であるかを明かして心を開くことが第一歩だ。
そうしなければ何も始まらない。
僕が生徒たちと初めて出会ったときはそういうふうに接していたなあ、
と思った。
「初心に返ろう。」と思った。

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