第23回
二学期になって間もなく、僕は「道徳」の研究授業をした。
テーマは「自然愛・畏敬(いけい)の念」。
宇宙や大自然の前で人間はなんてちっぽけな存在なんだろう、と、
子どもたちに気づいてもらうことを目指した。
テーマは僕が選んだ。
何をテーマにするか探している時に、おもしろい資料に出合った。
そこには、月に降り立った宇宙飛行士たちが地球に帰還した時に、
まず何をしたか?が書かれていた。テレビ中継を見ていた著者は、
彼らが抱き合って喜びを表すだろう、と予想していた。
しかし、意外にも彼らはひざまずいて祈り出した。なぜ?
僕はこの資料を読んで宇宙の大きさと人間の小ささを思った。
生命体のいない宇宙空間を漂う彼らを想像した。
人間は自分の力で生きているようでいて、実は地球の自然の中で
生かされている。彼らがひざまずき祈ったのは、
何か大きな愛と畏怖を感じたからではなかったか。
「いい話だなあ、素晴らしいなあ、
子どもたちにも考えてもらいたいなあ」と、強く思った。
重いテーマであることは承知の上で、こういう価値もあるんだよ、と、
子どもたちに伝えたかった。
高い価値に触れさせることで子どもは育っていくと思うからだ。
授業はT・T(チームティーチング)で、資料の半分は、別の先生が
読み、もう半分は僕が点字を読んで録音したテープを流した。
中学一年生には「畏敬の念」という言葉自体が
難しかったかもしれない。
でも、一年生なりに真剣に考えた一時間だった。それで十分かな。
日常を必死になって生きていると、「生かされている」とは
思いにくいものだ。
僕だってそうだ。しかし、自分の小ささを思い知ることは、
大人になっていく上で絶対に必要な感覚なのだ。今は思えなくても、
「あの時の授業はこういうことだったのか、、、」と、
いつか思い出してくれたらうれしい。