第28回

秋祭りが近づいてきた。僕の住む舞阪町(静岡県浜名郡)は、
古い町で、毎年、旧暦十月十四、十五日にあたる日に、
「大太鼓祭り」を行っている。
その日は、「郷土の日」として小中学校は休みとなる。
今年は十一月二、三日。三日は文化の日だが、
二日は、月曜日にもかかわらず、町全体が休みになる。
もちろん学校も休み。
今時、旧暦を貫いて平日に祭りをするのは、珍しいだろう。
でも、舞阪はもともと漁師町で、祭りは大漁祈願のためだから、
慣例を変えて、漁の神様が怒ると魚が取れなくなる、という
おそれがあるのかな。
町には四つの字があり、字ごとに二つずつ太鼓を出し、
岐佐神社から稲荷山神社まで叩きながら練り歩き、戻ってくる。
家の前には笹が立ち、提灯が掲げられ、露店が並ぶ。
大人が叩くのは直径二メートルの大太鼓。
中学生は、それより少し小さい太鼓を叩く。
大人も子どもも、手の平から飛んだ血で、太鼓が濡れるくらい叩く。
叩いた人は祭りの翌日、手が握れない。
中学生は三年生が中心で、僕も中学三年のとき叩いた。
これほど感動することはもうないかもしれないと思うほど、
泣けるほど感動した。
その時はもう、今と変わらないくらい目が見えなかったが、
楽しめたし、大きな達成感があった。
これからもやる気になってやろうとすれば、やっていけるんだ、という
自信にもなった。
高校入学と同時に東京に行った僕は、
秋祭りの度に、帰りたい気持ちが強かった
が、一度も帰れずじまいだった。
あれから八年がたって、大人になった河合はどう感じるのかな?
叩こうかな?はしゃいで飲み歩いてもいいが、教え子たちがいるから、
そうもいかないかな。
町の青年団に入っているわけじゃないから、
祭りにつかり切れない部分もあるし、血踊る部分もあって、
何かジレンマを感じそうだな。

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