第29回

十月下旬、生徒会役員選挙があり、会長一人(二年生)と、
副会長三人(二年生二人と、一年生一人)が決まった。
選挙活動は九月下旬にスタートした。
一年生の場合は、クラスごとに一人ずつ副会長候補を出し、
約一か月間、選挙戦を繰り広げる。
選挙の重みを知るいい機会になってほしい、と社会科の教員として、
願っている。
僕のクラスには、副会長をやってくれそうな、みんなが信頼している
生徒がいた。でも、その子は、推薦されそうになったとき、
「自分は役不足だ」と断った。小学校でも児童会役員をしており、
大勢をまとめることの大変さを知っている子どもだった。
大衆は選ぶだけで無責任だ、とも感じているようだった。
副会長候補者を決める話し合いの前、僕は生徒たちに、
「誰かに押し付けるようなことになったら、絶対にだめだ」と、
強く言った。
そして、クラス内の投票でその子に半分以上の票が集まった。僕は、
クラスのみんなが本当にその子にやってほしいと思っているんだ、と
確信した。
みんなは頼んだが、その子の意思は固かった。
僕は言った。
「大変さを知っているからやりたくない、というのもわかるが、
君にお願いしたい人たちの気持ちを裏切っていいのだろうか?」
社会では、みんなの前に出ていろいろしなきゃいけない役どころが
必要だということを、そして、
自分がそういう立場にあるのではないか?ということを、
わかってほしかった。
その子はしぶしぶではあろうが「やります」と引き受けてくれた。
みんなは全力で応援することを約束し、全員でポスターを作り、
毎日交代で「一票をお願いします。」と朝の校門や昇降口に立った。
僕は高校時代に生徒会長をした。あのころに比べると、
今の方が生徒会活動はずっと盛んだし、自分の学校を良くしようよ、
楽しく過ごそうよ、という意識は高いように感じる。
僕も協力を惜しまない。
一緒に生徒中心のよい学校にしていこうよ。

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