第43回
パラリンピックに向けて毎日二時間の練習時間をどう確保するか?
睡眠時間を削ると病気になるし、何より、
子どもたちに対する仕事なので手が抜けない。
そんなことをすると申し訳ないなあという気持ちになる。
こうした僕一人の問題以上の問題もある。
「パラリンピックで三週間シドニーに行く」というのは、
公務員として、税金をもらっている人のやることだろうか、、、?
民間企業の社員なら、その会社の名前を背負ってやれば、
宣伝にもなるが、僕は公立中学の教員なので、その辺は難しい。
頭を悩ませるところだ。
「シドニーには行かないの?」と、子どもたちにもよく聞かれる。
「さあねえ」と僕はお茶を濁す。
「シドニーに行くよ」と子どもたちに答えることは、
「僕はそれだけの努力をするよ」という約束だと思う。
先生が頑張ってるのを見て、自分も頑張るという生徒もいるだろう。
「行くよ」と言った僕がもし行けなかったら、子どもたちは、
「やっぱりだめなのか」と思うかもしれない。
教員と生徒の人間関係は、言葉によるコミュニケーションで
成り立っている。子どもたちとの約束を僕は大切にしたい。
軽い笑い話で済む問題じゃないのだ。
大げさな言い方かもしれないが、水泳は僕が人生をかけてやるもの。
簡単にはできそうにないことを「できる」なんて言っちゃだめなのだ。
「こうなりたい」という夢はある。
しかし、気持ちだけではどうにもならない。
夢をかなえるためにどうすればいいか?
どの程度のことをしなければならないか?
だいたい分かっているつもりだ。
ぼくは、今できることを毎日続けていくしかない。
それでも、出場できるかは分からない。
教室で子どもたちにこんな話をまじめにする機会は無いし、
明言を避けてもいるのだが、今、言える正直な僕の気持ちだ。