第29回
今月十七日は、阪神・淡路大震災から六年目にあたる。
去年暮れ、僕は神戸市主催の水泳教室と講演会の講師を頼まれ、神戸を訪れた。
神戸にはパラリンピックでお世話になったヘッドコーチや、バルセロナやシドニーに行った仲間もいる。
その人たちに会いに行くという目的もあった。
みんなは、神戸の「ルミナリエ」って聞いたことがあるかな?
様々なデザインのアーチに色とりどりの光がほどこされたイルミネーションだ。
震災の犠牲者の魂を静め、街の復興と再生への希望をたくして、
震災が起こった年の十二月に始まった。毎年数百万人もの人がやって来るそうだ。
今回、僕も初めてルミナリエを体感した。
会場には聖歌が流れ、幻想的な美しさの中を歩くんだ。
クリスマス・イブということもあって、ものすごい人出だった。
関東や四国方面から車で来る人もいるらしい。この日だけで六十万人以上と聞いた。
でも、この中でどれほどの人が本来の目的を知っているんだろう。
ただ、観光スポットとして見に来るだけで、その下には六千人の犠牲者の
モニュメントがあるということを知らずに歩いてはいないだろうか。
僕自身、これまで「ルミナリエは美しいらしい」という程度の知識しかなかった。
確かに、周りの建物が傾いているわけではないし、歩く人にとっては、震災の影を感じさせない。
でも、だからこそ、美しさの裏にあるものを忘れてはいけないと思う。
広島や沖縄には「平和」の象徴としての意味があるように、神戸も震災の経験から、
異国情緒のある街というだけでなく、新しい価値が加わった。
震災と復興について知った上で、神戸に目を向け、足を運んでくれる人が増えることは
喜ばしいことなんじゃないかな。
十七日には、おみやげにもらったルミナリエのネクタイと絵はがきを見せながら、
子どもたちにはそんな話をしようと思っている。