第3回
- わが町、舞阪 -
静岡県の西部地方、浜名湖と遠州灘とに囲まれた小さな町、それが舞阪である。500年ほど前には、地震、津波の影響で大被害を受けた(浜名湖が遠州灘とつ ながる)が、江戸時代には東海道の宿場町の1つ、舞坂宿として繁栄した。現在も国道1号、東海道本線が走っている。人口は1万人余。県内一面積が小さい。 豊富な漁場に支えられた漁業と、赤い鳥居が象徴的な弁天島の観光が主な産業である。
漁師町ならではの暖かい人間関係が町内に広がっている。言葉遣いはやや荒い。これも、やむをえない感がある。それは遠州灘で、シラス漁をしている時、2 そうが1組となって、漁を行う。その連携を声で確認するさい、ていねい語でやっていては、うまくいかないのだろう。南には、天竜川が運んできた白砂の海岸 が広がっている。渡り鳥のコアジサシの飛来地として、またアカウミガメの産卵地としても有名である。
あの潮風を初めて意識したのは、東京の盲学校へ進学した16歳の時のこと。軽いホームシックにかかり、ゴールデンウィークに帰省したとき、電車から降り た瞬間に感じた。東京とのギャップ、自分に故郷があることを誇りに思えたことを覚えている。舞阪の全てが好きなのである。
今でも、潮風を感じると記憶の奥に留められている風景が、呼び起こされてくる。1つ1つの細胞が、膨張し、失われた視覚を補おうとしているように。そし て今、子どもたちの笑い声が付加された。次回、あの潮風を感じる瞬間、きっと、これまで以上に故郷、子どもたちがいることを強く感じるだろう。